2024年4月26日
本日開館日

石水博物館 公式SNS

ごあいさつ

 石水博物館は、川喜田久太夫(号:半泥子)が昭和5年に地域文化の振興と社会福祉活動の拠点として設立した財団法人石水会館を母体としています。
 昭和50年に登録博物館となってからは津市丸之内の展示施設で地元に根ざした展覧会を開催し、市民の皆様に親しまれてきました。
 平成22年に法人名を公益財団法人石水博物館に変更するとともに、半泥子ゆかりの千歳山(津市垂水)に新しい展示施設を新築し、平成23年5月、移転開館いたしました。
 石水博物館の所蔵品は、江戸時代に伊勢商人の豪商であった川喜田家の旧蔵資料を中心としています。その分野は茶道具、日本画、洋画、古書典籍、錦絵、伊勢商人関係歴史資料など多岐にわたります。また、同家十六代当主であり陶芸家としても知られる川喜田半泥子の作品や周辺資料も多数保存管理しています。
 川喜田家の当主が代々蒐集してきたコレクションと川喜田半泥子の名品の数々を、千歳山の森の中にたたずむ石水博物館でごゆっくりお楽しみください。

半泥子と石水会館

 川喜田半泥子(かわきたはんでいし:1878〜1963)は、伊勢商人川喜田久太夫(きゅうだゆう)家十五代の長男として生を受けました。本名は川喜田久太夫政令(まさのり)、幼名善太郎。川喜田久太夫家は伊勢国津に本拠を置いて江戸大伝馬町(おおでんまちょう)に大店を構え、主に木綿太物を扱っていた豪商。創業は寛永年間で、半泥子生誕の頃には既に200年以上の歴史を持つ老舗でした。
 半泥子は幼くして両親と別れ、1歳で家督を相続し十六代久太夫を襲名することとなり、祖母・政や筆頭分家の川喜田四郎兵衛らから教育を受けました。また祖母の勧めにより若くから参禅したことによって強靭な心身を会得し、商家の当主として、また百五銀行第六代頭取他数々の企業の要職をこなしました。また先祖の意志を継いで地域振興の事業も手がけ、文化財団石水会館の設立もそのひとつでした。
 石水会館は、当時三重県下初の総合文化施設として津市丸之内本町(現東丸之内)に鉄筋コンクリート3階建の洋館や日本館などを備え、美術展、講演会、音楽会などを開催していました。これらの施設は残念ながら昭和20年の戦災で焼失しましたが、半泥子の財団設立時の精神は、80年の時を経て公益財団法人石水博物館に受け継がれています。
 半泥子はその多忙な日常において、書画、茶の湯、俳句、写真など実に多彩な趣味を持ち、いずれに対しても形にとらわれない自由で伸びやかな姿勢で風雅に遊びました。なかでも陶芸においては破格でした。本格的に陶芸をはじめたのは還暦が近くなってからのこと。晩年の手紙に「子供の頃から焼物好の私が昭和八年に千歳山に窯を築いて二三万作った、又廣永で今迄に作った一万斗(ばか)りと合すと大分の数になる」と記しています。戦前は自邸の千歳山に窯を築いて、中里無庵(1895〜1985・十二代太郎右衛門)、荒川豊蔵(1894〜1985)、金重陶陽(1896〜1967)、三輪休和(1895〜1981・十代休雪)、小西平内(1899〜1991)といった若き陶工たちと交わって研究を重ね、戦後は津市郊外の広永に窯を移して会社組織の廣永陶苑を設立、坪島土平(1929〜)ほか若い弟子たちと作陶を楽しみました。陶芸において「シロート」であり続けた半泥子の遊び心あふれる陶芸作品は、趣味の域を超え、高い評価を受けています。
 なお半泥子の号は禅の師の命名で、「半(なか)ば泥(なず)みて半ば泥まず」という意味です。その他「無茶法師(むちゃほうし)」「莫加野(耶)廬(ばかやろう)」「鳴穂堂(なるほどう)主人」「紺野浦二(こんのうらじ)」「其飯(きはん)」「反古大尽(ほごだいじん)」などがあります。また「泥仏堂(でいぶつどう)」は轆轤場の名であり、号としても用いています。

昭和5年開館当時の石水会館
轆轤を廻す半泥子

千歳文庫

千歳文庫(登録有形文化財)

 千歳文庫は昭和5年、川喜田半泥子が同家所蔵品の収蔵のため、津市郊外千歳山の自邸内に建設しました。

 鉄筋コンクリート造4階建て、総床面積は636.53m²。屋根は鉄骨トラスを組み、銅板瓦棒葺である。当初は三重県で2例目だったといわれるエレベーターを備えていました。設計者の前田健二郎は高島屋日本橋店や京都市美術館を手がけた建築家でした。施工は安藤組と伝わります。

 3、4階にバルコニーを設け、閲覧や応接に使用していたと思われる4階南側の部屋にシャンデリアがある以外は、外装、内装ともに装飾的要素はほとんどありません。高床式、二重壁、二重窓など、収蔵庫としてよく考えられた構造であるため、一年を通して湿度の変動がゆるやかです。

 平成18年に国の登録有形文化財(建造物)になりました。また、平成21年には、内側からのコンクリート打増しによる耐震補強工事を行いました(施工:清水建設株式会社)。

 現在でも石水博物館の収蔵庫として使用しているため内部は非公開ですが、駐車場から新・石水博物館のエントランスへ続くスロープやガラス張りのロビーからは、森の中に堂々と佇む千歳文庫の外観を眺望していただくことができます。(内部非公開)

所蔵品紹介

川喜田家歴代コレクション

半泥子の作品から

公益財団法人 石水博物館

〒514-0821 三重県津市垂水3032番地18

リンク

©Sekisui Museum.

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